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ふれあいと和みの家
≪大利根ろまん亭≫


●有限会社ゲン
〒371-0822
群馬県前橋市下新田町329-11
TEL.027-252-7735
FAX.027-252-7782

≪大利根ろまん亭≫
介護支援事業
≪大利根ろまん亭≫

ろまんな轍~介護史~

・・・・・・轍・・・・・・

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突然の幕引き・・・9(最終章)

2013-06-06
 ある冬の夜でした。

 突然携帯電話が鳴り響きます。番号を確認すると、何と花子さんの孫からでした。

孫「母が亡くなりました。」

 え??何が起こったのか一瞬分かりません。だってつい昨日元気でいたはずなのに・・・青天の霹靂。まるで事実が飲み込めません。しかし、しかし確実に花子さんの孫は言い続けます。

孫「母が亡くなったんです。」

 状況を聞いたら次のようでした。

 数日前から頭痛の訴えがあったそうです。しかし一過性の頭痛だと思っていたらしいのです。看護師である花子さんの孫が夜勤から帰宅すると・・・・既に息を引き取っていた花子さんの娘が寝室で横になっていました。くも膜下出血だったそうです。

 まるで眠るようになくなっていたそうです。

 これがストレスからくるものなのか、そうでないものなのかは分かりません。しかし確実に日頃のストレスは何某かの作用を起こしていたと感じます。

 葬儀は家族葬で。しかしここで何故か僕も参列するように頼まれます。花子さんの付き添い。そして花子さんの娘が僕に対してとても信頼を寄せていてくれた事。そんな理由で家族葬ではありますが、参列させていただきました。

 花子さんは何だか上の空。まるで実感が無い様子です。本人はこのことをどのように捕らえているのか?今更聞くこともありませんが、何か感じることがあると良いなぁ・・・と思いました。

 突然の主介護者の他界。果たして花子さんはどうなるのか?介護放棄している孫達が面倒を見るのか?

 その部分は花子さんのもう一人の娘と息子、同居の孫達との話しになります。

 花子さんの娘が他界してから約一ヶ月は孫が面倒を見ていました。しかし明らかに限界。たった一ヶ月で限界です。何となくしおらしくなったようにも思いましたが、根本は変わっていないようです。

 僕は・・・入所を勧めます。他には娘と息子に任せるように勧めます。

 孫達も亡くなった娘と同じ轍を踏まないように、出来るだけ早く介護から離れるようにアドバイスします。もうこれ以上花子さん一家が苦しまないよう願います。

 花子さんの孫は看護師です。勤務先の病院のソーシャルワーカーに相談するよう持ちかけ、相談した結果、勤務先病院に社会的入院が出来ることになりました。期限は決まっていませんが、とにかく孫達が介護から離れる事ができる。

 デイサービスに来られなくなるのはちょっと寂しい感じはしますが、今回の社会的入院は現状ベストな選択だと思いました。

 程なくして花子さんは入院となります。そこから数ヶ月は何かにつけて問題があると孫達から連絡がありました。しかし最近は連絡もプツリと途絶え最後に聞いた話では結局息子が引き取る事になったとか・・・・

 これまでの事を繰り返さない事を祈らずにはいられません。

 一体花子さんの娘の人生はなんだったのでしょうか。考えると悲しくなってしまいます。もっと出来ることがあったのではないか?娘は幸せだったのか?

 考えれば考えるほど自分自身の不甲斐無さがこみ上げます。

 最終的に息子が引き取る。・・・・これで良かったのだろうか。。。。

突然の幕引き・・・8

2013-05-13
 かれこれ利用始めて7年が経ちました。その間同じことの繰返しです。

 娘さんのストレスもなんだか年中行事のような様相になっています。

 入所させたい→いや、でももう少し頑張ってみる→何とか出来そう→やはりダメかも・・・・

 こんな感じの繰返し。負のスパイラルです。こうなってくると我々はどのように接すれば良いのか?

 流石に娘さんの表情や声でその時の機嫌の良し悪しを見分ける事が出来始めました。なのでストレスを感じているような時は話しを聞いて、機嫌が良いときは楽しい話しをする。兎に角娘さんの状況に応じて対応していました。その中でも勿論花子さんには出来るだけ家族の希望を聞くことを促します。

 穏やかな日も沢山ありました。でもトータルすると険悪な状態の日々のほうが長かったと思います。

 ストレスは娘さんにのしかかってきます。積み重なっていきます。

 問題は花子さんだけではありませんでした。

 一家の中心だったので、家族を支えなければいけませんでした。そんな中、同居の孫達の介護離れ。孤立無援の状態が発生しています。肝心の花子さんといえば、相変わらずです。

 積み重なっていくストレスに、時折体調不良の訴えが出てきています。我々も受診をお勧めしたのですが・・・・

 仕事に家事に追われ、自分の時間が取れない様子です。

 ショートステイも勧めました。しかし結局戻ってくる事を考えると・・・・と言う理由で受けません。我々としても八方塞がりです。入所も結局受けてくれずに・・・・

 ただただストレスが積み重なる日々が続いていくのでした。

 我々はどうすれば良いのか?毎日スタッフミーティングで議題に上がります。手の打ちようが無い。入所もダメ、ショートステイもダメ。花子さんと娘が完全に離れる時間帯はデイサービスの時間のみ。

 我々はどうすれば良かった?何か良い方法は無かったのか??

 娘の姉妹達も全く援助の音沙汰はありません。

 我々は何も出来ないのか?ほんの一時、ストレスを発散させる事しか出来ないのか??

 僕はそんな中、進んで花子さんの送迎に絡みました。花子さんの送迎を一番最後にし、娘がいたら兎に角世間話をする。ちょっとでも気がまぎれるように出来るだけ楽しい話しをする。笑って頂く。

 そんなちっぽけな事しか思いつかない自分は・・・・情けない。。。。

 続く

突然の幕引き・・・7

2013-04-19
 案の定、程なくして娘は花子さんに手を上げることとなります。とは言っても日常茶飯事ではありません。やはり予想した通り、手を上げたあとは自己嫌悪に苛まれていました。

 手を上げた後は約束通り必ず報告をしてくれます。これが救いでした。

 ご自宅では何が起こっているのかわかりません。しかし、どんな事であろうと、報告をしてくださるので対応もし易かったです。手を上げてしまった原因も聞かせていただきました。

 原因を聞いてみると、どのように贔屓目に見ても花子さんに非があります。その場合、花子さんには何故娘が手を上げてしまったかを説明し、どのようにすればその様な事が起こらなかったかを話します。

 例の如く話しているときの返事はとても良いのですが、その後継続してその気持ちを持続できません。こうなると繰返しが起こります。

 これは虐待になるか?

 自分自身に問いかけます。

 そしてある日、娘さんがかなり深刻な表情で話してきました。

 「昨日母の首を絞めました。」

 その瞬間、これはもうストレスを軽減して・・・なんて悠長な事は言ってられません。場合によっては市役所もしくは県に報告もしなければなりません。そして話しの続きを聞きます。

 「どうしても我慢できなかったんです。トイレに入って私に暴言を叫ぶんです。」

 つまり理由はこうです。

 ・・・・・排泄のコントロールが上手くできない花子さん。紙パンツはご自宅の日中でも濡れてしまいます。ろまん亭では失禁は全く無いのですが、自宅ではダメ。そして履き替えるならまだしも、濡れて染み出ていても履き替えない。そこで家族が注意すれば暴言で返してくる・・・・・・・

 花子さんはトイレに入って娘に暴言を吐き続けました。これには耐え切れず、トイレの扉を開けて首を絞めた・・・・と言うのです。しかしこれにはまだまだ続きがあります。

 「母はどうしたと思いますか?・・・・首を絞めた私に対して唾を吐きかけてきたんです。」

 なるほど。花子さんは負けじと反撃してきたとの事。

 今回の他にも家族に対して動く足で蹴り上げようとしたり、暴力的な行動は時々あったそうです。(花子さんは左半身麻痺です)

 麻痺があっても攻撃してきたり、今回の首絞めの件も反撃したり・・・・

 これはもう虐待ではありません。喧嘩です。母と娘の喧嘩。

 一方的に暴力を受けるのではなく、反撃し、時には蹴り上げようとしたり杖を振り上げてみたり。これって虐待を受けている人の行動でしょうか。少なくても僕にはそうは見えません。これは喧嘩。

 しかし「首を絞める」行為はやはりしてはいけません。その行為について、十分注意させていただきましたし、本人もそのことは深く反省していました。花子さんは・・・・・

 何も響かず何も感じていません。

 これでは家族崩壊も可能性としてはでてきます。

 同居の孫も既に気持ちは離れています。実質介護の負担は娘のみ。精神的肉体的にどんどん追い詰められています。我々はと言うと、娘の話しを聞いて、出来るだけ花子さんに家族に協力するように話し続けます。

 虚しい堂々巡りと知りながら・・・・

           続く

 

突然の幕引き・・・6

2013-04-08
 家族との折り合いは日に日に悪くなる一方です。どうにも解消できません。

 何度話しても何度言い聞かせても、結局は元の木阿弥。家族のストレスは大きくなる一方です。こうなってくると心配なのが虐待。つまり手が出てしまうのではないかと言う事。

 確かに暴力を振るうのは良くありません。しかし花子さん一家については、暴力を振るった方が悪い・・・とは言い難い気がします。

 なぜかと言うと・・・

 ニュースなどで虐待の話しが出ます。殆どの場合暴力を振るってしまった人に非があると言うニュアンス。でも状況をよく見ていくと実際はそうだと言い切れなくなる事だってあります。

 花子さんの家族については正にその様な感覚を受けました。第三者から見ても花子さんの言葉の暴力や自分勝手加減が常軌を逸しています。これは家族が精神的虐待を受けているような、そんな風にも見えてきます。

 家族がいくら頑張ってみても、当の本人が全く言う事を聞かずに生活している。

 排泄管理も出来ない、時間もルーズ、食事もボロボロこぼしながら食べる・・・・ちゃんとすれば出来る方なんです。そのことを注意すれば、暴言が返って来ます。これでは家族もたまりません。

 巡り巡って手が出てもおかしくない状況です。

 ろまん亭を利用して数年経っています。この数年、本当に良く我慢していたと思います。勿論家族だって花子さんに対してきつく言ったり口げんかはあったと思います。しかし何遍見ても何遍聞いても家族の方が精神的にやられてしまっています。

 花子さんの家族に虐待の話しをしました。もし花子さんに手を出してしまう事があるのなら、必ず僕に言って欲しいと。それによって大きな虐待に繋がらないように抑制をしなければいけません。

 虐待はするほうもされるほうも傷つきます。するほうは自己嫌悪。でも我慢できずに手を上げて。そして自己嫌悪。負のスパイラルです。少しでも精神的にフォローしたいと思いながら、家族が手を上げるのも仕方なし・・・と、思い始めていきました。

 ただ、手を上げたときは心の痛みを少しでも共有できれば、ご家族の精神的な負担が軽くなるのではないかと考えたのです。

 この状態からまだまだ数年が過ぎていくのでした・・・・

            続く

突然の幕引き・・・5

2013-04-02
 受身の姿勢の花子さんと家族、折り合いが合うはずもありません。

 自宅に戻ると喧嘩が絶えません。それを見ている孫達にまで変化が出てきてしまいました。それまで自宅での歩行練習に付き添ってくれていたのに、次第に付き添わなくなり、目に余るような傍若無人な暴言を花子さんが言うと、それを上回るように反撃して・・・・

 あんなに優しかった孫まで変化してきてしまっています。当の花子さんはその事に全く気付いていません。送迎時に娘から色々状況を聞きます。家庭内の不協和音。改善できる見込みが見えてきません。

 この頃になると家族は花子さんを生理的に受け入れられなくなってきます。要はその存在自体に嫌悪感を抱いてしまい、些細な事にも過剰反応。こうなってしまうと更に改善は難しい。

 でも家族の心の根底にあるのは、せめて花子さんが反発せずに素直に何でも話してくれれば面倒見る気持なんです。当然家族も努力しています。多少暴言が出ても怒らず、優しく接する。

 これって相当厳しい事なんです。

 「よく頑張っています!」

 我々は家族の努力を認めてあげることくらいしか出来ないのでしょうか。

 花子さんはほぼ毎日デイサービスを利用しました。なので時間はたっぷりあります。僕の手が空いている時を見計らい、個別で話し合います。最初に書いたように花子さんには認知症はありません。

 繰返し伝える方法。飴と鞭での誘導。様々な言葉で伝えました。例え話も沢山しました。花子さんはマンツーマンで話しているときはとても素直です。返事も良いし・・・・・

 でも実際は聞き流しているのです。何となく分かったような素振りはしますが、根本は何も変わりません。やはり70年以上の歴史を生きてくると早々変わることも出来ないか・・・・虚しい個別の話し合いが数ヶ月・・・いえ、2年くらい続いたでしょうか。とにかく根気良く話し続けました。

 家族間は最悪です。この様子だと虐待も可能性が出てきます。家族がどこまで頑張るのか?僕らは虐待と言うケースにならないように家族ともしっかりコミュニケーションを取るようにしました。

 花子さんには別居している二人の子供がいます。ここまで来ると、同居の娘だけでは介護は難しいと判断し、その子供達に連絡を取りました。しかし・・・・

 別居の子供達はまるで関係ない事のように、全く関与してきません。。。どうして・・・・・同居の娘の話しもしっかり聞きません。つまり同居している娘家族は完全孤立状態です。

 せめて、せめて他の姉妹達にもう少し同居の娘の話しを聞くゆとりがあれば、それ以上家族が追い詰められるような事にはならなかったかも知れません。とにかく周囲の環境もあてに出来ない状態となってきました。

 花子さんとその家族。そしてろまん亭。

 この先の展開を考えると、ちょっと気持が重くなってしまいそうです・・・・

             続く
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